まだバブルの時代の頃、職場近くの青山ベルコモンズに入る際、いつもみずみずしく薫る香りがありました。
青山ベルコモンズとは、当時、東京都港区青山にあった、婦人服飾を中心としたファッションビルです。
その香りは、お花屋さんの前を通るような、思わず息を深く吸い込みたくなるような、みずみずしくかつ甘く、華やかで明るい香りでした。
後に、その香りは「アントニアズフラワーズ オードトワレ」という名前の香水であることを知りました。
アントニアズフラワーズとは
アントニアズフラワーズとは、創始者であるアントニア・ベランカが、1981年にアメリカニューヨーク州の避暑地イーストハンプトンで開いた花屋の名前です。
働くうちに、この花屋の空間の香りを形にしたいと思った彼女は、精油を学び花の香りを作り出すことが出来たのが「アントニアズフラワーズ オードトワレ」です。
アントニアズフラワーズの初めての香水となりました。花々の自然な香りが大切に生かされたこの香水は、発売以来、人気のロングセラーとなっています。
アントニアズフラワーズ オードトワレの購入
今でこそ欲しい香りやボトルがあったら、インターネット通販で簡単に手に入ってしまう時代ですが、当時は取扱店を一件一件チェックしなければなりませんでした。
そのため外出の際、特に初めて行く場所では、必ず立ち寄ってショウウィンドウをじっくり眺めていたものです。
アントニアズフラワーズ オードトワレの購入先は、青山ベルコモンズで取り扱い店を聞いて、近所のレイジースーザンで購入しました。
レイジースーザンとは当時、東京都港区青山にあったセレクトショップで、当時はまだ珍しかった輸入品なども取り扱っていました。
黒く高級感あるお洒落な店構えで、見やすく買いやすいお店でした。
アントニアズフラワーズの香水は、日本では現在もレイジースーザンが販売店となっています。
アントニアズフラワーズ オードトワレの香り
アントニアズフラワーズ オードトワレの香水の香りは、体の周囲に次々と色々な種類の花々が咲くような、幸せに囲まれるような印象です。
フリージアが主成分に加え、ジャスミン、マグノリア、ユリということで、花の香りの良いことにおおよそ納得がいきました。
フリージアの少し軽いような安っぽくなりそうな所を、マグノリアやユリの上品な苦味が引き締めているような感じもします。
つけはじめは、みずみずしさにときめくように惹かれ、やがて甘く華やかな、心安らぐ香りとなります。
好きな香りプラス少し思い出のある香り
このようにストレートにお花のブーケを感じさせる、アントニアズフラワーズの香水は珍しく思えます。一方で、オーガニックさやエコロジカルさも感じます。
アントニアズフラワーズ オードトワレの香りは、誰にでも好まれる香りではあったものの、当時は職場での香水の使用は嫌がる人が多かったため、香水を楽しむのはもっぱら自室のみでした。
ミニボトルの香水を買い集めてみては、その形や香りを自宅でこっそり楽しんでいたのもこの頃です。
しかしある時、職場の同僚がアントニアズフラワーズ オードトワレの香水をつけて出勤してきました。初めてこの香りを知った周囲の人達も皆気に入ったようです。
それくらい多くの女性から好まれるタイプの香りのため、私の心中は複雑でした。外出すると多くの人とかぶるような香りとなってしまった気がしたのです。
数十年以上たった今では、アントニアズフラワーズは、好きな香りプラス少し思い出のある香りです。
最初に手にした時の記憶が蘇ってくるような時がやがて来るため、良い時代にためらわずに購入しておいて良かったと思っています。
ある程度の年齢に達していれば、香りの好みや感じ方にその後大きな変化はないように思えます。